沈黙が続く。


私達以外誰もいない教室は、誰かがちょっと動くだけで、音が大きく響いてしまう。


そんななか、蒼甫君がやっと口を開いた。


「先月の20日の放課後、この教室で、お前と優月に何があった?」


20日?


えっ?


私はハッとした。


渋谷君を見ると、彼ももう思い出しているようだった。


「あの日は…」


渋谷君が話そうとして、口を閉じた。


渋谷君はうつむいている。


私に気を遣っているのかもしれない。


だったら。


だったら私が言うしかない。


「蒼甫君。私、あの日ね」


「竹内、やめろっ」


「渋谷君?」


「思い出させたくないんだよ。言わなくていいから」


蒼甫君と瀬名君は驚いた顔をして、じっと渋谷君を見つめている。


「なぁ、二人とも。
あの日の事は勘弁してくれよ。竹内を傷つけたくないなら」


真剣に二人に訴える渋谷君の姿に、なんだか泣きそうになってしまった。