「この駅、初めて降りた」


駅前の広場に出た途端、蒼甫君がキョロキョロと周りを見渡す。


その仕草がなんだか可愛い。


「蒼甫君こっちー」


「ごめん。なんか珍しくて」


走って来る蒼甫君を待って、商店街をゆっくり歩き始めた。


商店街を抜けると、景色は住宅地へと変わる。


突き当たりの小さな階段を上がり、川沿いの細い道へと出た。


「ここを真っ直ぐ行けば、すぐ着くよ。

ほら、見えて来た」


「あぁ、あれかぁ」


川沿いに建つ白い壁のカフェ。


入口の花壇に植えられた色とりどりの花がとても可愛い。


今日もお客さんでいっぱいだ。


「私は裏口から入るから、蒼甫君はここから入って」


「了解」


そう言うと蒼甫君は、カフェのガラス戸を開けて中へと入って行った。