優しく触れていた唇が離れ、角度を変えてまた触れる。


今度はゆっくり沈み込むように。


「ん…」


そうして何度も角度を変えながら、蒼甫君は優しく、慈しむように唇を重ねる。


私はただ…。


それを静かに受け止めていた。


しばらくすると、蒼甫君の唇が私からすっと離れ。


頬に触れていた両手もゆっくりと離れていった。


額に少し汗が滲んでいるのがわかる。


体が熱くなって、目の焦点がなんだか合わない。



「拒まなかったね」



蒼甫君はそう言うと、怪しげな目つきで笑った。


いつもの爽やかな笑顔ではなく、少し意地悪で、やんちゃな少年の笑顔だった。


私は顔から火が出そうなくらい熱くなるのを感じて、両手で頬を隠した。


キスされた。キスされた。キスされたーーー!


もう、パニックなんですけど。


「やっぱ可愛いな、ちくしょう…」


そう言うと、蒼甫君は私の髪を撫で始めた。


優しく触れる手に、なんだか涙が出そうになる。


「アイツのモノになんか、なるなよ…」


蒼甫君?