「好きなら言えよ。渋谷が好きだって」


蒼甫君、ずるいよ。


何週間も知らんぷりしておいて。


どうして今さらそんなことを聞くの?


い、言うんだから。


ちゃんと言えるもん。


「私は…。し、ぶやくんが…」


どうしてだろう。


なぜか言葉にならない。


「いいよ。続けて」


ゆっくりうなずく蒼甫君。


真剣なその瞳に怯んで、思わずギュッと目を閉じた。


震えるように息を吸い、やっとのことで「す…」を吐き出す。


次に『き』と言おうとした瞬間。


私の唇に何かが触れた。


あたたかくて、柔らかい何かが…。


両頬には、すっぽり包む大きな手。


恐る恐る少しだけ瞼を上げると、蒼甫君の顔がすぐ私の目の前に…。


私の唇に触れていたのは…。


蒼甫君の唇だった。