「優月」


蒼甫君が私を真っ直ぐに見つめる。


サラッとした茶色の前髪が右の瞳を隠していて、なんだかそれが妙に色っぽくて。


思わず見とれてしまう。


「アイツのこと、ホントに好きなのか?」


ドクンと、心臓が大きく跳ねたような気がした。


好きか?と聞かれて、言葉に詰まってしまう。


渋谷君はいつも優しくて。


女の子達にからまれた時だって、私を助けてくれて。


あたたかくて、ほっと出来て。


きっと好きだと思う。


でも…。


「俺の目を見て言える?」


「蒼甫君」


どうしてそんなこと聞くの?


どうして、それを言わせたいの?


言ってどうなるの?


もう関係ないんでしょう?


ずっと私のこと、避けてたじゃない。


気がつけば私は、目にいっぱい涙を溜めていた。