「実はだいぶ前に、保健室に来てたんだ。

でも、その…」


なぜか言葉に詰まっている蒼甫君。


どうしたんだろう?


「渋谷が来てるみたいだったから。

だから俺、こっちのベッドに隠れてたんだ」


えっ?


蒼甫君、ずっとそこにいたの?


「ジャマしちゃ悪いと思って」


胸の奥がチクリと痛む。


なんでだろう。


蒼甫君にそんなふうに気を遣われることが、なんだかいたたまれなくて苦しい。


「で、ごめん。見ちゃった」


「え…?」


見たって、何を…?


「渋谷にその…、キスされそうになってるとこ」


えーーーーっ!


み、見てたの?


いやーーーっ!


恥ずかし過ぎるーーー!!!


「でも優月、拒んでたろ?」


「あ…」


そうだった。


思わず跳ね返してしまって。


「アイツ、相当凹んでんじゃねぇかな」


苦笑いする蒼甫君。


私ははぁと息を吐いた。


だって、ビックリしちゃって。


反射的に身体が動いちゃったんだもん。


きっと、傷つけちゃったよね。


どうしよう…。