「やっ」


ドンッと私は渋谷君を押し返した。


渋谷君が座っていた丸椅子が、バランスを崩して倒れそうになる。


私はハッとして、身体を起こした。


「ご、ごめんなさい。あのっ」


「……。俺こそ、ごめん」


渋谷君は頬を赤くして、自分の口を片手で押さえている。


「ごめんね。竹内」


あやまることなんてない。


あやまるのは私の方なのに。


「ごめん。俺、授業始まるから教室戻るね。また顔出すよ。ゆっくり休んで。じゃあね」


そう言うと渋谷君は、カーテンの向こうへと姿を消した。


渋谷君。


つらそうな顔をしてた。


私ったらバカだ。


どうして押し返しちゃったんだろう?


渋谷君、どう思ったかな?


どうしよう。


その時だった。


シャッとカーテンが開く音がした。