昼休み、私は売店に行くため、渡り廊下を一人で歩いていた。


すると、前から蒼甫君と瀬名君と静華ちゃんが歩いて来る姿を発見してしまった。


隠れてしまいたいけれど、この渡り廊下は曲がれるところもなく、逃げるなら後ろに行くしかない状態だ。


もう私の姿は見られているみたいだし、引き返すのはあまりにも不自然だ。


私は仕方なく、うつむいたまま右端へと移動して、彼らとすれ違うのを覚悟した。


その時だった。


「優月ちゃん」


すれ違い様に呼び止められる。


声の主は、静華ちゃんだ。


振り返ると、蒼甫君と瀬名君と目が合った。


喉の奥が、誰かに締め付けられたみたいに苦しくなる。


どうしていいかわからず、立ち尽くしていると。


「彼氏、出来たんでしょう?」


静華ちゃんが綺麗な顔で笑う。


「相手って渋谷だよね?」


私は、体が硬直したみたいに動けない。


「アイツ、同じ中学だったの。ああ見えて女子にすごく人気あったんだから」


静華ちゃんはさらに口角を上げる。


「渋谷、いいヤツでしょう?大切にしてやってね」


そう言うと静華ちゃんは、ひらりとスカートをひるがえして、教室のある棟へと向かった。


蒼甫君と瀬名君はしばらく私を見た後、何も言わずに振り返って行ってしまった。