「昨日、渋谷君に付き合ってって言われたの」


「えっ、また?前にも言われてたよね?

そ、それで優月ちゃんはどうしたの?」


さっちゃんは動揺しているみたいだ。


「付き合いますって言った」


私の答えに、さっちゃんの目が倍くらいに大きくなった。


「えーっ!」


ガクンと膝を曲げて、その場にしゃがみ込むさっちゃん。


「ど、どうしたの?さっちゃん」


びっくりして、私もその隣にしゃがみ込んだ。


「だって…。なんかショックで」


さっちゃんは、なんとも情けない顔をしている。


「どうして?」


やっと初めての彼氏が出来たのに。


さっちゃんが、ふぅとため息をつく。


「私ね。優月ちゃんは、蒼甫君か瀬名君のどちらかと、いつか付き合うんだろうなって思ってたの」


「えっ?」


さっちゃん、何言って…。


「あの二人、口には出さないけど、優月ちゃんの事すごく大切に思ってるよ。そばにいたから私、よくわかるのよ」


さっちゃんは目を潤ませている。


「優月ちゃんは二人のこと、なんとも思ってなかったの?」


そんな…。


なんとも思ってないだなんて、そんなわけない。


大事だよ。


すごく大事だったけど。


「……っ」


涙がぽたりと頬を伝う。


だって…。


だって二人はもう…。


「優月ちゃん?」


私は膝を抱えて顔を伏せた。


涙があとからあとから流れてくる。