あれから渋谷君は、私を自宅まで送ってくれた。


ずっと手を繋いでいた事に気づいたのは、自宅の玄関に着いた時だった。


渋谷君がいなかったら、どうなっていただろう?


ゾクッとして、私はぎゅっと自分を抱きしめた。


あれ?このジャージ。


あっ、そうか。


ブラウスのボタンがないから、渋谷君が自分のジャージを貸してくれたんだ。


洗濯して返さなきゃ。


あの後、渋谷君が散らばったブラウスのボタンを集めてくれて、ブレザーのポケットに入れてくれた。


お母さんに見つかる前に全部縫わないと。


心配されちゃうもんね。


何もされなかったんだから…。


大丈夫よ、私。


でも…。


「うっ…」


怖かった。


怖かったよ…。


私はベッドに顔を伏せて、声を殺して泣くしかなかった。