南天満山の天満神社に続く竹林の中の遊歩道は、踏みつけられた彼岸花が絨毯のようになっていました。


雨は上がり、蒸した空気のもわっとした香りが満ちています。


ぽくぽくと隣を歩く天狗の尻に、二本の猫尾が揺れていました。

関ヶ原に着いたのは朝だと思っていたのに、いつの間にか空は夕暮れ色に染まり、竹林にずらりと提灯が点りました。



見上げた空は、笹の葉の隙間に茜が射し、意味もなくわたしはため息をつきました。


「すぐにため息をつくのは、ヌシの悪い癖じゃ」

「以後気をつけます」


天狗は二本の猫尾をゆらりゆらりと揺らしながら、前を向いて歩いています。

提灯が風に揺れると、猫尾の天狗のシルエットも伸びたり縮んだりします。


「ため息の前に息を吸うと、深呼吸になるぞ」

「どこかで聞いたことがある・・・どこでしたっけ?」


「そんな昔のことなど忘れたわ」


最近なんだけどなぁ…と首をひねり、まあいいかと諦めました。