多分あたしが望む様に、佐倉さんはあたしを愛してはくれない。
あたしが佐倉さんを好きな気持ちの半分も、きっとあたしを好きじゃない。
それでも、佐倉さんは待っててくれた。
慣れない体制で寝て、車の鍵も開けっ放しで。
そしてあたしのために、ブレスレットを買ってくれた。
多分婚約指輪の足許にも及ばないくらいの、安物だけど。
それでもいい。
ほんの少しでもあたしを想ってくれてるのなら、もうそれでいい。
だってあたしの気持ちは、変わらないから。
あたしが佐倉さんを、好きなんだから。
この関係は長くは続かない。続けちゃいけない。
わかってる。だからそれまでは。
それまでは、この恋を許して。
そう言うとどこかで、マモルが小さく笑ってくれた気がした。
「…ねぇ、佐倉さん」
「何?」
「さっきね、虹が見えたんだよ」
「虹?」
「うん。…東京の空も、案外捨てたもんじゃないよね」