「…亜弥」

耳許で名前を呼ばれた。それだけで全身感じてしまう。
彼の声が好きだった。低く、身体の中心に響く様な声。
その声であたしの名前を呼ばれただけで、あたしは簡単に吐息を漏らしてしまう。

耳にキスされ、首筋にキスされ、胸にキスされ。

わかってる。今日も唇にはキスがないことくらい。

理由は知らない。知りたくないから頼まない。多分、彼なりの境界線なのかもしれない。年齢の割りに、考えることは案外可愛い。

唇のキスはないが、それ以外のキスは沢山降らせておいて、あたしを絶頂へと誘う。

「…あ…っ、」

簡単だった。簡単にあたしは、意識を手放した。

…もったいないな。もっと彼を感じていたかったのに。

薄れゆく意識の中で、早く目が覚めればと思った。

一分一秒でも長く、彼を見ていたいから。