「あ~…罪悪感」
「は?何よ?」

殆んど独り言のあたしに向かって、知恵は心底意味のわからなそうな顔をしてみせた。

もしあの日お酒を飲んでなかったら、もしかしたらすぐに間違い電話だと伝えられたかもしれない。
そうしたら彼はすぐにかけなおして、もしかしたら"サクラ"さんに通じていたかもしれない。

溜め息をつき、思い切り伏せる。


時間がたてばたつほど、罪悪感は増すばかりだ。

彼は電話をかけなおしただろうか。

かけなおして、それでうまくいっていて欲しいと思う。

名前も何も知らない人だけど、あの真剣な声を聞いたら誰だってそう思うだろう。

そう思うのに、あの諦めた様な苦笑が脳裏を過る。

そこであたしは再び、大きな溜め息をついた。


その繰り返しだった。