「あの…」
『すみませんでした。ご迷惑かけて…それじゃ』

あ、と言う暇もなく、電話は切れてしまった。ツーツーツー、電子音。

「…切れちゃった」

携帯を耳から離し、画面を見つめる。

やっぱり間違い電話だったんだな。

あたしのせいじゃないし、きちんと間違いだったって伝えたけど、なんだかすっきりしない。

昨日の真剣な声と、今日の諦めた様な苦笑い。
多分彼は、もう"サクラ"さんには電話をしないだろう。

二度と、自分の気持ちを伝えようとしないだろう。

「…関係ないや。あたしには」

携帯を閉じて、カバンに突っ込んだ。

気にしなかったら忘れるでしょ。

ほんの少しのもやもやを抱えながら、昼間の街を歩き始めた。