ゆっくりとお互い離れる。

少し伏せた目を上げると、綺麗な目を細めたマモルが見えた。

小さく胸が鳴る。

夜の闇でもマモルの顔が微かに見えるのは、あの小さなホタル達のおかげで。

…ねぇマモル。

あたし、あなたのホタルになれるかな?


「あ…」

ふいに、ホタルがあたし達の間を横切った。

ゆっくりと、穏やかに。

それは小さな合図だったのかもしれない。

ゆっくりとマモルが手を伸ばした。
あたしはその手を取り、頬にそっと寄せる。

「…チェリの顔、見えるよ」

頬、瞼、鼻、順に優しく触れていく。
あたしはそっと目を閉じた。

「名前なんて、何でもいいよ。俺にとってチェリは、チェリしかいないから」

瞼の裏に、マモルが見えた。
それはまるで、電話越しの会話の様で。

お互い姿は見えない。見えないけど、とても近くに感じていて。


そっと寄せたお互いの唇を、あたし達は小さく重ねた。


始まりと終わりのキス。


閉じた瞼から、そっと雫が頬に伝った。



…ねぇマモル。

この感情は、何て呼べばいい?

ただ優しくて、ただ愛しくて、

ただ、守りたくて。


いつも必要だったのは、あたしを呼ぶあなたの声だった。