…「はい、これ」
シャワー室から出たあたしに、既にきっちりとスーツを着た佐藤さんはお金を渡した。
四万円。いつもより多い。
「今日は特別にお小遣い。ボーナス出たからね」
「…あたしじゃなくて、奥さんに何か買ってあげればいいのに」
「これは、サクラちゃんにあげたいの。若いんだから色々お金もいるでしょ」
お札を握らせて立ち上がる。「こないだ言ってたバッグでも買うといいよ」、洗い立ての髪を軽く撫で、佐藤さんは出ていった。
佐藤さんはいつも帰りにあたしの髪を撫でる。あの人は絶対そんなことしない。スーツを着たらそこは現実。甘い言葉はベッドの中だけ。