「…寒」

一言呟いて、シーツにくるまる。

地肌に冷たいシーツが絡み付き、寒さは増す一方だ。

おかしいな。季節はもう、6月なのに。

なんだかひどく、疲れていた。

張りつめていた糸を切られた様に。ただ気だるさと寒さだけがあたしを襲う。


『間違えたって、いいんだよ』


目を閉じたら、マモルの声が聞こえた。

あの優しい声を、あたしはもうずいぶん聞いていない。

マモルからの連絡はあった。でも、出ない様にしていた。


…ごめんね、マモル。

あたしは今、あなたと向き合える自信がない。

ダメだったんだよ。あたしは、佐倉さんを愛しちゃダメだった。

傷ついて、傷つけて、消費するだけの愛。

それでもあたしは、未だに佐倉さんの夢を見る。

仕草も、声も、佐倉さん全てが。

全てが、嘘に思えるの。

間違った愛の中に、本当のことなんてあるはずないから。