捨てれなかった。そんな、叶わない想いに酔いしれている自分を。

本当に欲しいのなら、全てを捨ててでも奪いに行けばよかったのだ。形振り構わず、制服のまま、家に乗り込んででも。

あたしから電話をできなかったのは、ただ単に引け目を感じていたからじゃない。

そこをラインにしていたんだ。無意識に。
可哀想な自分を、客観的に見れるライン。

彼女はそれを越えてきた。

いくら醜い自分をさらけ出してでも、相手より劣ってると実感してでも、それでも取り戻しにきた。

…完敗だった。見事に。あの、くまとシミに包まれた表情の彼女に、ファンデーションで塗り固めたあたしの頬は、ストレートで殴られた。

あたしの愛って、何だったんだろう。

例えばマモルの愛が誰かの幸せを願うためにあるものだったのなら、あたしの愛は誰かを傷つけるためだけにあるものだった気がする。

所詮あたしの愛なんて幻影で、自分を守るためだけの卑怯なズルい気持ちだった。
影で誰が傷付いてようが関係ない。あの一瞬さえあれば、それでいい。

いつか誰かが言ってた。愛とは、自己犠牲だと。

こんなの愛って言えない。ただの、利己的な欲望だ。

泣けなかった。泣く資格なんて、あたしにはない。