「佐久矢拓です。最後の人は……」 「和泉侑李です。クラリネットの調整、お願いします」 「了解」 日が差し込む準備室。 少し汗ばんだ額を拭いながら、細かい手作業で私の楽器をきれいにする彼。 私は自分のタオルで、彼の額の汗を拭いた。 「大丈夫…?」 急にやられてびっくりしたのか、彼は少し目を見開いて、すぐに笑顔になった。 「…ありがと」