鼓膜を遠慮なく蹴り飛ばすような絶叫で月のむこうに旅立っていた俺の魂はようやく引き戻され、

「いてっ! いてっ!」

 次の瞬間、無作為にそこら中の物が俺に向かって際限なく投げつけられる。

「んきゃぁぁぁぁぁぁ!!」

「わ!? ちょっ! いてっ! ま、まって!! いてっ!」

「変態! 馬鹿! エッチ!!」

 ど、どこにこんだけの物があったんだ?

 私物はちゃんと持って帰れっての!

 うぉ! だ、誰だ“ぶんちん”なんてもんを置きやがったのは!

 確か運動が得意ではなかったはずのまゆみが、今まで俺がみてきた誰よりも速いスピードで次々物を投げつける。

 そりゃぁもぅいろいろと。


 雑誌(なぜかファッション誌だけはつかまない)。

 ペン(赤と黒、別々ね)。

 コップ(幸いプラスチク)。

 雑巾(雑菌だらけの雑巾)。

 ぶんちん(棒状のやつで上になぜか扇風機の像があしらってある)。

 UNO(知ってる? うまい具合に飛んでくると非常に危険)。

 ボロボロの革靴(顔の前を通ったとき若干くさかったぞ、おい)。

 カッター(刃が出てたら本気で危ない)

 野球のボール(“もちろん”硬式。スピードガンがあればよかったな)。

 ルーブックキューブ(第何次ブームだ?)。

 石(……おい)。