「葵さんっ!」

カリフに唐突に名を呼ばれ

「ひ、ひゃいっ!」

と可笑しな返事を返す葵。

「あなた…今、何が欲しいですか?」

「え?」

カリフの意図が読めない…。

今までの深刻そうな重たい話が何故このような話になるのか?

問いかけるカリフに葵の頭はついていけず、返事を返せない。

「葵さん?

 私の話、聞いてます?

 何が欲しいのかと聞いているのです!」

カリフは笑っている…。

が…、その額には青筋が見てとれる…。


『もうやだなぁっ!この人!

 笑ってるけど、何か怖いよっ!』


カリフから、無言の責めを受け葵は慌てて頭を巡らす。

「そ…そうだな!

 今、欲しいもの、欲しいものは~っと」


カリフ、イフリート、美里が見守る中、

葵は必死に頭を、巡らす……。


「…!!そうだっ!!

 『恋する海賊王2』!!

 確か、今日発売したばかりなんだっ♪」


「………なんですか?

 それは…?」

カリフとイフリートがポカーンと口を開ける中、

今まで黙って事の経過を見守っていた美里が口を開く…。


「…葵ちゃ~ん♡

 やっぱりまだ、ママに隠れて

そんな気持ちの悪い恋愛ゲームなんてやっていたのねぇ?」


美里は笑っている…。

が、その威圧感ときたら…

『はっ!!』

葵はここに来て初めて気がついたのだ…。

カリフと名乗る男の持つ威圧感と、

美里の放つ禍々しいオーラ……。

『この二人は似ている!!』

が…、

今そんな事に気がついた所で、葵には何の得にもなりゃしない…。

「どうしてっ!

 どうして女の子らしく出来ないのっ!?

 ママ、こんなに可愛く葵ちゃんを産んであげたのに……。

 どうしてなのよう~~~っ!!」

泣き叫び出す美里…。

あぁ…

タイムマシーンがあるのならば

あの発言をする前に戻りたい…。

面倒な事態に後悔する葵だが、

吐いてしまった言葉はもう二度と取り消せない…。

まだ若い葵には丁度良い勉強だ…

こういう経験を重ねて社会を学べば良い。

良い気味だ。(ニヤリ)