「イフリートにかけられたまじないは、

 『コーランを開いた人間を幸せにする事』。

 コーランから出れて両手放しに喜んでいるイフリートには

 申し訳ないのですが、それは、ただ、コーランから出れただけであって

 封印が解けた訳ではないのです」


「なんだとっ!?」

ニッコリ微笑むカリフに怒声を上げるイフリート…。


葵はというと…

カリフの言ってる意味がいまいちよく解ってなく、

すぐに理解したような反応を返すイフリートに感心しながら

可笑しな顔をしてカリフとイフリートを代わる代わる眺めていた。


「そんなのっ!!嘘だっ!!
 
 お前、俺を動揺させようとしてそんな事言っているのだろうっ!?」

イフリートは冷や汗混じりにカリフに食いつく。


「嘘なもんですか!
 
 ほら…その証拠に…

 あなた、自由に魔力が使えないでしょ?♡」


「……っ!?」


「…ね?

 ほら…嘘じゃない♡」


そう言ってカリフはニッコリ微笑む…。

まだ、この一連の話に追いつずキョロキョロとせわしなく視線を動かす、
頭の悪い葵は少し置いておいて…


このカリフと名乗る男…

なかなかのドSっぷりだ…。

ただでさえ、長く辛い封印だったろうに、

さらに二重のトラップを仕掛けるとは……

その優しい笑顔の裏は一体どうなっているのであろう?

一つ言える事は、彼がなかなかの『やり手』であるという事は間違いない…。


「…お…おれは…

 魔力まで封じられてしまったのか…??

 そんな…そんな事って…」


事の重大さと悲惨さを告げられイフリートは絶望を噛み締めるようにブルブルと震えている…。

その姿が、余りに哀れに映ったのか、カリフが慌てて訂正する。


「あぁっ!勘違いしないで下さい。

 魔力はつかえますよっ!」


「嘘をつけっ!!

 何度魔力を使おうとしても発動しなかったじゃないかっ!!」


ブルブル震えているイフリートの瞳には、

うっすら涙が滲んでいるかのようにも見える…。


傍から見ていると……


もはや、どちらが邪悪なのか解らない…。


「いいえ!使えます!」

断言するカリフ。

そして「ただし」と付け加えた。

「ある条件を満たした時、

 あなたの魔力は発動するのです」


「…条件っ!?」


「ええ♡試してみます?」