「あ…あの…アシュラフ、これはその…」
必死で言い訳のネタを捻り出そうとするが、
そう簡単に出て来るわけもなく…
そうこうしている内に、美里がこちらの異変に気付き
イフリートと名乗る男を伴ってこちらへと近づいてきた。
「葵ちゃん、アシュラフ、どうしたの?」
自分がやってはいけない事をしたという自覚があるだけに
葵は美里の質問に答える事が出来ずにいた。
言うときっと殺される…。
葵が一人でオタオタしていると、男が急に怒声を上げる。
「あーーーっ!!!お前はっ!!」
そう叫んで男が指を刺したのは、アシュラフだった。
「………っ!!」
アシュラフは無言で男を睨みつける。
睨み合うアシュラフとイフリート……。
一体何だというのか?
まさかとは思うが、この二人もしや顔見知り??
しかし…なんたるラッキーか…
イフリートとやらが怒声を発してくれたおかげで、
事の矛先が葵から完全にそれたように思われた。
この良運の波、乗らずにいる理由はない!
「お…お二人は、お知り合い?」
葵は恐る恐る言葉を発した。
「………」
二人はそれに答える事なく睨み合っている。
「美里さん…とてもきけん、こちら、きてください…」
アシュラフが低い声で警告する。
一体何だというのか?
このおどろおどろしい雰囲気は…
先に沈黙を破ったのはイフリートの方だった。
「…よぉ…久しぶりだな!カリフ!!
俺はお前の顔を決して忘れはしないぞっ!!」
「魔人イフリート…あのはなし、まさか、ほんとだったなんて…」
アシュラフの片言の日本語のせいなのか、
何なのかは解らないが、さっぱり話が見えてこない。
「ね…ねぇ、どうしたの?二人共…一体何があったの?」
葵の問いかけに、アシュラフが険しい顔つきで口を開く。