ここから始まる。


心地よい朝も、眠れない夜も。

苦しい愛も、楽しい恋も。


貴方との物語もここから始まったね

なんて

ひとり呟いてみるけれど、
貴方がこたえてくれるわけでは
ないんだよね。


大きなため息は、
部屋の中に残ったままだった。


「先輩…。」


暗い部屋の中で
光る液晶画面をなぞった。




季節はもう、秋だね。


語りかける相手がいないのは、
とても寂しい。



剛生先輩と別れて、もう1ヶ月。

毎日がつまらない。


先輩の部活のマネージャーだし、

毎日、会うはずなのに。

私の目にはその姿が映らない。


「杏ちゃーん。」


私を呼ぶこえが風に混じって聞こえる。


先輩たちと、一緒に過ごす時間は、
以前と変わらない。


剛生先輩以外は。


電話の一本もくれない。

メールもよこしてくれない。