一歩一歩
ゆっくりと距離が広がる。
―追いかけたい―
―追いかけたくない―
―泣きたい―
―泣きたくない―
―叫びたい―
―叫びたくない―
俺の中で起こる二つの葛藤
それは先輩が見えなくなるまで続いた。
息をするのを忘れていたと気づいたのは
先輩の姿が消えてから。
どう………しよう………。
悲しみよりその言葉ばかりが
次々と浮かんでくる。
俺はそのまま立つ力を無くし、
その場にへたり込んだ。
「………どうしよう………。」
俺の声が
ただ虚しく響くだけの、玄関。
―――――*
それから俺が教室に戻ったのは昼休み。
正しくは心配して来てくれた
亮太によって、強制的に
連れ戻された。
亮太は何も言わずに俺の隣を歩く。
俺はできるだけ平然を装った。