教室に入ればさっそく声をかけられる。


「ごきげんよう。五十嵐さん、今日はいつもより遅めの出席ですわね。何かありましたのですの?」


ええ、寝坊してしまいまして、ははっ。


なんて事実を伝えるわけには行かない。

あの五十嵐財閥の、あの五十嵐輝愛が寝坊とは。実にけしからん。面子丸潰れになる。


さぁ、どう答える、私。

事実を言うだけじゃこの世界で生きてはいけない。

いかに嘘らしくない嘘をつくか。


もしや試されているのか…?



ここは…


「運転手の方が体調不良で代わりの者を用意していたら遅れてしまいましたの。申し訳ありませんわ。

あっ…そのブローチ可愛いですわね」


必殺!責任転換!運転手さんごめん!

「このブローチは…」


そして、さりげなく違う話題にすり替え、遅れたことには一切触れさせない!


これでこそ五十嵐輝愛よ!