あれは夏の盛り。



桜の若葉に覆われた神社の一角で、初音は花が咲いたような笑顔を浮かべ話してくれた。



『私、神様になりたいの。巫女様のご負担を軽くしてあげたい。たくさんの人々を護る巫女様の、お役に立ちたいから』

「母さんの?どうして初音がそこまでするんだよ。あくまで初音は巫女のサポートだし、巫女には専属の護(モリ)がいる」

『……大切な約束を、私も守りたいの。私のすべてを受け入れてくれた、愛しいあなたの大切なものを』

「――っ」



風が木々を揺らす。



鬼火は初音を抱きしめる。例えようのない愛しさが胸中を支配し、こそばゆい。






君は覚えててくれた。