「珠美」


「……慎お兄ちゃん!」


病室に入って来たのは、テレビの中で取材を受けてる慎お兄ちゃんだった。


「……テレビ見てたのか……って、俺かよ」


テレビの中に映っている自分を見てお兄ちゃんは、照れた様な苦笑いを浮かべていた。



「うん!やっぱ、お兄ちゃんかっこいいね」



テレビの中のお兄ちゃんを見て呟くとすぐ隣にお兄ちゃんの気配を感じると顎を掴まれてお兄ちゃんの方を強制的に向かされた。



「……お、お兄ちゃん……?」


至近距離にあるお兄ちゃんの整った顔に戸惑って視線を下げようとしようとしてもお兄ちゃんの手がそれを許してくれなくて、私を真っ直ぐに見つめるお兄ちゃんの瞳を見つめ返す。



「珠美は、本物よりテレビに映る俺を見るの?」



少し拗ねた様なお兄ちゃんの声に私は無意識のうちに笑ってしまった。



「……フフフッ、ごめんね……お兄ちゃん」



そんな私を見てお兄ちゃんはもっと拗ねるけど、とても優しい瞳で私を見つめていた。



「今日は、体調が良いみたいだな。一週間前から調子が悪いって母さんに聞いたから心配してたんだ。辛いときにいてやれなくてごめんな」



眉を垂らして申し訳なさそうな顔をするお兄ちゃん。



「……お兄ちゃんは、お仕事忙しいんだししょうがないよ!こうやって来てくれるだけで嬉しいもん!それでも、気が済まないなら歌って?お兄ちゃんの声大好き!」



お兄ちゃんに微笑みかけると大きく骨張った手が私の頭を優しく撫でる。




「優しいな、珠美は。いいよ、いくらでも歌ってやるよ……珠美の為なら」




そう言うと申し訳なさそうな顔から優しい笑みに変わった瞬間、お兄ちゃんの綺麗な声が私の病室の中を響いて私の耳に届く。




やっぱり……お兄ちゃんの声綺麗。



手に温かな温もりを感じると瞼が重くなり視界が真っ暗になる。




「……俺の可愛い珠美……。次来るときは……」




お兄ちゃんの声がだんだん遠くなっていった。



次来るときは……何?




手から温かい温もりが消えると共に私はら意識を手放した――。