男――カルツの風貌を目を細めて見る。

月明かりが似合う男だと思った。見目は良い。優男らしく笑っているが、言葉の端々に威圧感があることから、いつでも殺せると示唆されているようだ。


危険な男。これに尽きる。しかして。


「助けてくれたのは、あなたで違いないですよね」


家主の遺品となろうバスローブ下の肌には包帯。痛みは引かないが、手当てされたというのは分かる。


「俺だよ。間違いであってほしいけど」


長い足を組む。無作法な姿勢の割に、男がやる分には絵になっていた。


「何かの、間違いなんだ」


助けたのは。
半ば、“自身に言い聞かせるような物言い”の意味を“猫”は知らない。