(二)


“猫”が起きたのは、それから三日ほど経った時か。


「富豪のお坊っちゃんとは知りませんでしたよ」


「開口一番に言うセリフが、それなんだ」


とは言え、自分が逆の立場ならそう問うかもしれないと、カルツは手頃な場所にあった革製のソファーに腰掛けた。


座り心地よりも見た目を重視したバロック様式のソファー。ソファーもソファーなら、この一室自体が、さる貴族のそれだ。


部屋の端から端まで敷かれたペルシア絨毯。今は明かりなどつけていないが、月明かりに反射するスワロフスキーのシャンデリア。


更には、“猫”が腰かけるベッドはキングサイズの天涯つき。


「よほど、悪いことをして来たんですね」


でなければ、こんな家には住めないと“猫”は言う。