「猫って、死ぬ前に見た奴のことを呪うそうですよ」


挑発するかのように、嘲笑するかのように、声を出す害悪のおかげで息が止まる思いとなった。


珍妙な生き物に出会ってしまった戦慄。今の言葉で気を失ったか、夜雨と同化してしまった。


「……」


濡れた前髪をかきあげ、どうしたものかと考える。


十秒。
害悪(他人)のことで、これだけ頭を使うことになるのは初めてであり。


「人って温かいモノかと思ったのに」


生きた人に触れたのも初めて。自身よりも冷たい奴がこの世にいるとは思わなかった。