(一)


「こんな雨の日だと、初めて出会った時を思い出すよね」


などと、ミナナに股がりのたまう彼にデコピンをしてしまった深夜。


「人の安眠を妨害しといてそれですか」


「あの日のミナナを思い出したら、急に抱き締めたくなって。あ、ドレスあるんだけど着る?」


「明らかに、『昼間から考えてました』なことですね」


青色のドレスをベッド脇に捨てる。ふん、と横を向くミナナには可愛いとした賛辞が送られた。


「二人で走るとき、ロミオとジュリエットってこんな感じなのかなぁと思ったね。愛があれば、障害を乗り越えて、どこへでも行ける」


「そこに本がありますから、その盛大なる勘違いを正して下さいよ」


本大好きミナナの自室ならば、有名どころがあってもおかしくない。ミナナが言うならと彼は思うが、やはりまだミナナに触れたいとのし掛かる。