(四)
こんな珍妙な事が何日続いたであろうか。
“猫”と顔を合わせたくないと言いながら、食事の時だけは戻って来、終われば早々に立ち去るカルツ。
誰かと食べる食事は楽しい、との公式を脳内に組み込んだにせよ、かくいう“猫”は『食事は食事』と割りきっている。
それをカルツが知ってか知らずかは定かではないにしろ、また今日も昼時に来たのであれば、もうずっとこのままなような気もしてきた。
「あなたって、絵本の中の住人ですよね」
ベーグルサンドをベッド上で食べる“猫”は言う。
「……?」
「人間味がない」
「クッ」
そうして美麗に綻ぶ口元さえも、人間とはかけ離れている――とは、“猫”の胸の内だ。