「いや、なんでもないよ。」

僕はなにもいわないまま目をそらした。

「この絵は、妹から聞いたかも知れませんが私のものだったものなのですが奪われてしまったのです。」

「そうですか。」

「本当にありがとうございました。」

そういうと姉は深々と頭を下げた。僕は変な感覚に襲われた。頭を下げた彼女の姿がどうしても時代錯誤に思えたからだろう。