私が青年の向かいのソファに座ってもすぐに話が始まるわけではなかった。
気まずい沈黙が続く中、時計の秒針がやけにうるさく聞こえる。
ついに耐えられなくなって青年を見ると、バッチリと目が合った。そこで青年は口を開く。
「心の準備はできたか?知っていると思うが、私がアグカ国第一王子ハワード=エスだ」
すごく威厳のある声…。圧倒されてしまう…。
……………じゃなくて!
アグカ国?
王子??
話についていけない。
第一、まだこの状況の説明がないじゃない。
「え…?」
そう漏らすと青年は眉をしかめた。
「私を知らないのか?」
え、いや……。
そういうことじゃないんだけど…。
でも…この人のこと知らないし…。
頭の中はパニックに陥った。
そこでお母さんからの助け舟が出る。
「アオ。手紙来なかった?アオ宛てに」
手紙……?
「映画の試写会の当選のやつなら来たけど…」
当選…。
お母さんはそう呟いて
「その手紙見せて」
と言った。
訳がわからないのだけど、とりあえず頷いてから自分の部屋へ当選の通知を取りに行く。