金丸さんだろうか?
少しドキドキして扉をそろりと開けると、そこに立っていたのは金丸さんではなかった。
スラリとした体型で長すぎず、短すぎずのどちらかというとさっぱりとしたイメージの黒髪。
顔は整っていて、それでもってこの凹凸の少ない顔はー…
纏っているのは、執事服を連想させるもの。
誰ー?
そう思いつつも、彼の纏っている雰囲気にはなんだか懐かしさがあった。
私が自然と首を傾げると、彼はクスリと笑って
「中へ入ってもよろしいですか?」
と、さっき私が車に積んだ荷物を掲げた。
あ、私の荷物運んでくれたんだ…。
「はい。あは…ごめんなさい…」
「こちらで宜しいでしょうか?」
彼は部屋のテーブルを指して言った。
「はい」
「荷ほどきはどうしましょう。宜しければ、お手伝い致しましょうか?」
「……い、いえ!大丈夫です!!」
大して荷物も大きくないし…。
「…………………」
「…………………」
「…………………………」
「…………………………?あの…?」
黙って私をじっと見つめる彼には部屋を出て行く気配がない。
彼の行動を不思議に思い、声をかけたところで理由に思い立った。
そっか!
「あの…ありがとうございました!」
私の荷物を運んでくれたんだもんね。
お礼は忘れちゃダメだよね。
それでも…
「………………」
出て行く気配はない。
もう、分かんない……。
どうしたらいいんだろ…。
アグカ国にはアグカ国のお礼の仕方があるのだろうか???
完全に困りきって悩む私を見て、彼は『はぁ』と息を吐いた。
「ダメか……」
彼の呟きにドキッとする。
ダメって何が!?
私、何か間違えた!?
来て早々に幻滅されたの!?
そう思った次の瞬間。
「ーーーーっ!?」