「プリンセス、こちらです」
王子に案内を任された金丸さんの後につく。
「プリンセス、ここを右に曲がります」
「……………」
「あ。プリンセスついでなので言っておきますが、こちらが使用人部屋の一角となります。先程のマイク様、ドルトン様のなどのある程度ご身分の高い方たちの部屋でございますね。恐縮ながら、私もこちらのお部屋を使わせていただいております」
「……………」
「さぁ、こちらですプリンセス。ここがプリンセスのお部屋です。さぁ、中へ」
そう、通された私の部屋はとても素敵な部屋だったのだけれど……。
「あの……」
「どうかされましたか?プリンセス。気に入らないのでしたらすぐにお部屋をお変えしますが…。それとも、ご気分が優れませんか?」
「や……とても素敵な部屋です。私にはもったいないぐらいに…。それに、私は元気です」
「では……」
言いかけた金丸を遮った。事を大事にしてしまっては困る。
「違うんです。あの……その…、“プリンセス”ってやめてくれませんか……?私はプリンセスになってないし、なんか落ち着かないんです」
金丸さんは目を丸くした。
そして、しばらくして
「では、なんとお呼びすれば?」
「アオ……。アオって呼んで下さい」
「アオ様」
名前を呼ばれたが、首を横に振る。
「“アオ”です。呼び捨てです」
金丸さんはまた目を丸くした。
それから
「アオ。これで良いですか?」
「はい」
笑顔で答えた私に、金丸さんは苦笑した。