日本の人口、約1億3千万人。
その中からパートナーをみつけて結婚。
その出会いのきっかけが出会い系サイトでもおかしくないはず。
そのためにサイトはあるんでしょ??
出会い系で本当の恋を見つけたわたしの物語。
ずっと彼氏がいなかった。
産まれてきてこのかた17年。
好きな人はおったけど告白なんてとてもできんかった。
告白なんて誰からもされんかった。
だってわたしは美人とか綺麗なタイプとちゃうから。
周りにはいっぱいカップルがおるのにわたしはいつもフリー。
まぁ友達がおるし、別にええ。
でもその友達も彼氏ができた。
「恵子もはよ男見つけたがええんちゃうの??」
そんな言葉がわたしを焦らせる。
そんなわたしが手を出したのは携帯の出会い系サイトやった。
出会い系ゆうたって無料のもの。
高校生で親に携帯を払ってもろとるわたし。
パケット代だけでも高い言うて怒られるのに有料なんてできるはずがない。
この頃はパケ放題なんて便利なもんはなかった。
月のパケット代が1万なんてザラ。
でも怒られてでも出会いが欲しかった。
──カチカチ。
親指をいじってアルファベットを打ち、雑誌で見たサイトへつなぐ。
そして出てくるサイト。
1千万人が利用と書いてある。
ここできっと出会える。
そう信じて投稿欄をのぞく。
この頃は18歳以下なんて決まりはなかった。
まだ事件なってほとんど起こっとらんし、話題にすらのぼっとらんかった。
投稿欄にも年齢検索に15~18歳の欄があるくらい。
堂々とみんな高校の名前とか出しとるくらい。
わたしは返事が来るんかわからんかったから3人の人にメールを送る。
同じ17歳で高校2年の人、そして高校3年の人、そして大学生の人。
【市内の高校に通っとる2年です。名前は恵子です。よかったらお返事ください。】
3人に同じメールを送った。
そしたら驚くことに3人ともわたしに返事をくれた。
3人の男の人とメールすることなんてなかったから嬉しかった。
モテてる気分を味わえた。
タメの人はてつおくん。
近くの高校で帰宅部。
ギターが趣味やって言うとった。
1つ上の人はカズくん。
この人も近くの高校で元野球部。
もう引退しとった。
大学生の人はしんくん。
地元の有名な私立大学。
一人暮らしをしとるって言うとった。
でもてつおくんとカズくんは【うん。】とか聞いたことにしか返事がなくて話題に困った。
だけどしんくんは聞いたらたずねてくれて、そして内容もすごくおもしろくて。
返事に困らないようにメールをしてくれてた。
だからしんくんを優先にわたしは返した。
返事がわからなくなったてつおくんやカズくんからは【何しとるん?】とかのメールは来よったけど【学校おるで。】とか返すと【そうなんだ。】とかで止まるから返事をしなくなった。
そして自然消滅。
連絡をとることはいつの間にかなくなっとった。
でもしんくんとはずっと連絡を取り合っとった。
しんくんの外見を聞いたり、学校のことを聞いたり話したり。
メールではしんくんは
背は170センチちょっとくらい。
居酒屋でバイトしとる。
車の免許はあるけど原付しかない。
彼女は半年くらいおらん。
って言うとった。
メールをしとるだけなのにわたしはいつのまにか…しんくんに恋をしとった。
恋に慣れとらんかったからと思う。
でもほんまにいつの間にかしんくんのことを考えとった。
外見も声も知らんのに美化しとったんや。
きっとこんな感じの人なんやって想像するのはかっこええ男の人。
前好きだった人に似せたりとかな。
そんなときバイトから帰ったしんくんから
【電話出来ひん??】
ってメールが届く。
ドキッとした。
初めて声が聞けるんやって。
手にジワッと汗が広がるのがわかった。
携帯に汗をつけながら返事を送る。
【出来るで。わたしもしたい。わたしの番号はコレやで。】
そうやって番号を添付する。
そしたらその数秒後に電話がかかってきた。
知らない番号。
きっとしんくんや。
『も…もしもし??』
「恵子?」
想像しとったのよりちょっと高い声でわたしの名前を呼ぶ。
ワキに汗をかいてるのがすごくわかってた。
『しんくん?』
「そうやで。ごめんな電話いきなりしたいなんて言うて。」
やっぱり想像通り電話でも気遣いのできる人やった。
わたしやって電話したかったのに向こうがしたいって一方的に言うたみたいに言ってくれる。
『いや、わたしも話してみたかったから…。』
「そうなんや。嬉しいわ。」
初めて喋るわたしたち。
まるで初めて高校に行ったとき緊張しながら席の後ろの子に喋りかけるようだったと思う。
その日、2時間くらい話した。
メールで言ってた学校のことを詳しく聞いたり、バイト先の名前を教えてもらったり。
もっともっとしんくんのことが気になるようになってしもた。
声を知ったから。
それから度々電話でも連絡を取るようになった。
電話をかけて、出らんかったらかかってくる。
それがうれしかった。
だってわたしは初めてこんなに男の人と連絡を取るようになったんやから。
嫌いな下ネタやってしんくんは言うてこんかったし。
「最近恵子よー携帯さわっとるよな。ええ人でも出来たん??」
友達のヒカルが聞いてきた。
わたしは隠すことなくしんくんとの出会いを話した。
早く言わんでごめんな、って言葉と一緒に。
でもヒカルは話を進めるたびに微妙な顔に。
「出会い系サイトって何なん??初めて聞いたわ。」
そこから説明をせなあかんかった。
そして説明をするとまたヒカルは微妙な顔に。
「そんな出会いで大丈夫なん??どこの誰かわからんやん!!ヤクザかもしれへんで??」
そんなことないって言い切れる。
でもヒカルはしんくんを知ってる人が誰もおらんとに好意を持ってるわたしをおかしいといい続けた。
ヒカルの彼氏は友達に紹介してもらった人やったから周りも知り合いで安心しとったんやろう。
「大丈夫やって。絶対普通の人やし。大学の話もちゃんと聞いた。ほんまっぽかったから。」
そう言って無理矢理納得させた。
ヒカルの表情は晴れんかったけど何言われたってしんくんと連絡を断つ気はわたしにはなかった。