ムカついたから、ちょっと意地悪してやろー。






あたしは、カナタの袖をちょいちょいと引く。




本に夢中なカナタは顔を上げず、横目だけでこっちをちらりと見た。






いつものことだから、あたしは気にせず、にっと笑いかける。







「そーいえばカナタ、知ってる?」






「なにを?」






「最近あんたさー、実は付き合ってる子がいるって、もっぱらの噂になってるみたいよ。


こーんな性悪な奴に、彼女なんかできるわけないじゃんね〜。



皆なんで、そぉんなことも分かんないのかね〜。


心底、不思議だよね〜。



うははは〜〜〜」







そしたらカナタは、相変わらず本から目も上げないままで答えた。







「ああ、付き合ってる子? いるよ」











うん、うん。



そうでしょう、そうでしょう。





あんたと付き合う子なんか、そんな物好きな子なんか、いるわけ……………