「そうか……お前達遊女は吉原の外に出る事は出来ないのか?」
男が丸い目をくりくりさせながら聞いてくる。

私はその黒い瞳に吸い込まれそうになる。

「……ええ、水揚げされないかぎりはね」

そう。

私が目指しているお職花魁も、水揚げされなければただの娼婦に他ならない。
権力よりもはるか望むもの。

……この地獄から出るための、手段

※水揚げ…客の家に永遠に住み込むこと