「ねぇ、先生。
やっぱり手術痕って・・・引かれるものなんだね。
そう思ったら、辛くなっちゃって・・・。

病気の時は元気になりたいって思って、その望みが叶えられると今度は傷痕が気になって・・・。

どんどん欲が深くなる・・・」


「そんなの誰だってそうだろ?
一つ目標がクリアされると更に上を望むのは当たり前だし、ちょっとでも人に良く見られたいとか、良い印象を持たれたいとか普通に思う事だ。

綺麗になりたい、人に好かれたい、良く見られたい・・・女性なら特にそう思うもんだろ?」


「そうかな・・・?」


「そうだよ。
だから、気にする事なんてないんだよ。

それより・・・そんなバカな男に捧げなくて良かったじゃないか。
むしろ、そっちをラッキーと思え。

いつか現れる運命の人の為に護ってたって罰は当たんないぞ?」


涙を堪えながらウンウンと頷く彼女の背中を何度も何度もさすった。
どうやら少し落ち着きを戻したようだ。


「そっかー! 先生さすがだわ。 まじヤバっ」


「その言い方、やめなさい」


「目からウロコ。 飯塚センセ、パねぇし」


はぁ。
パねぇ・・・か。

こんな一言に、つくづく年の差を感じてしまうんだよな。