病院の中庭に植えられたキンモクセイ。

まさに今が満開の時。

それでもキツイ香りを放つ事なく、控えめにその香りを風に運ばせている。



「あたし・・・失恋しちゃったぁ」


努めて明るく話すけど。



「そっか、ついにお前も恋する年頃になったか!
先生は嬉しいぞ」

茶化してみるとキッと睨み付けてくる鋭い眼差し。



「先生・・・酷いよ~」


うん。確かに酷いな。


「ゴメン」と心の中で呟いた。


なぁ、泣きたい時は思い切り泣いてもいいんだぞ?