コンコンッ
「はぁーい」
「琉聖です。組長と若がお待ちです。」
「今行くわ。」
琉聖さんの声がした。
紀子さんの綺麗な手が私の涙を拭う。
「ほら、行きましょ♪」
紀子さんが私の手を握る。
『……はい。』
私達は組長と翔輝が待っている部屋に向かった。
ガラガラッ
「おぉおぉ、華音さん、改めていらっしゃい」
……?
さっきの組長さんよりさらに優しくなった気がする。
「おい、華音。泣いたのか?」
翔輝が私の方に歩いてくる。
『え、あぁ……まぁ。』
「お袋になんかされたのか?」
「ちょっと!!なんで私が華音ちゃんをいじめなきゃいけないのよっ!!」
……あぁ。
幸せだな…。
幸せな家族だ。
そう思ったらまた涙が流れた。
「え、お、おい、華音?」
翔輝が心配そうに私の涙を拭う。
『……幸せ…ですね。』
「は?」
『初めて人に“ありがとう”って言われました。温かいんですね。“ありがとう”って…。』
私がそうゆうと翔輝は微笑んで私の頭を撫でた。
「どうゆうことだ…翔輝が笑っている。」
「まぁ、本当。珍しいですねぇ。」
組長さんと紀子さんの驚く声がした。
「うるせぇよっ!!」
翔輝はそれに照れたように私を抱き締める。
「まぁまぁ。仲がいいことっ♪」
琉聖さんも微笑みながら部屋の隅で立っていた。
私は初めて家族の温かさを知った。
改めて翔輝に出逢ってよかったと思った。
でも…
私への神様からの意地悪はまだ続く…。
どこか不気味さを漂わせるメロディ
徐々に速まるテンポ
時々なる不協和音
5ページも及ぶこの曲を閉めるのは…
全8音の和音
東屋組に行ってから1週間がたった今日。
今日は翔輝の仕事が休みだ。
「なぁ、華音。」
午前10時。
『ん?』
「今日の夜…街へ出てみないか?」
……
え?
「って…まだ無理か…。」
翔輝が少し寂しそうに私の頭を撫でた。
胸が痛む。
街へ出るってことは私の瞳と髪が人目に触れるってことだ。
“呪われた子”
「ごめん、忘れてくれ。焦らなくていい。」
『……きましょう…』
「え?」
『行きましょ♪デート!!』
「はぁ?」
初めてのデートだ。
無駄にしちゃいけない!!
「え、でも華音…」
『翔輝が一緒なら大丈夫。』
わっ!!
翔輝は私を強く抱き締めた。