「……本日はどのようなご用件で?」
「実はなぁ…お前に見合いの誘いがきてる。」
……っ!?
「香港の財閥の令嬢だ。お前ももう20だろ。そろそろ考えてみろ。」
……っ…
「まぁ。熱が下がったら帰ってこい。じゃぁな。」
プーップーッ…
……嘘だろ。
昔から父親の言うことは絶対だった。
『翔輝…さん…?』
「っ!!」
心配そうな華音の声がした。
『どうかしましたか?』
……ダメだ。
守るんだろ。
華音を守るんだろ。
「華音…明日、本家に行くぞ。」
『……?』
俺はそっと華音の頭を撫でた。
ーーーーーーーーーー
ゆっくり車が止まる。
『……しょ、翔輝…ここ?』
昨日の夜強制的にさん付けを禁止された。
「……あぁ。」
目の前にはとてつもないお屋敷。
『……うん。』
「行くぞ…。」
『え、ちょっと…』
初めて…
初めて赤髪、赤目を人に見せる。
「……華音、俺がいる。大丈夫だ。」
翔輝の大きくて温かい手が私の頭を撫でた。
『……うん。』
私達は琉聖さんが開けてくれた車のドアを出た。
「「「おかえりなさいませ、若頭……………………っ!!!!」」」
私達が車から降りた瞬間一斉に外に並んでいた怖面の人たちが頭をさげた。
頭を上げたと思ったら私に集まる視線。
翔輝はそれを無視して歩く。
私は翔輝に手を引かれたままついていく。
前が見れない。
人の目が怖い…。
立派の玄関の前に来ると翔輝がいきなり足を止めた。
「……誰か来てる。」
『……え?』
「若、本日は…婚約者のかたが来ていらっしゃいます…けど…。」
……婚約者?
翔輝の…?
『翔輝…婚約者いるの…?』
私は…?
どうゆうこと…?
「気にするな、華音。行くぞ…。」
翔輝の私の手を握る手が強まる。
『……え?』
「前を見て堂々と歩け。俺はお前だけだ。」
翔輝の言葉は自然に私の心に届く。
でもまだ他の人の目線は怖い…。
ガラガラッ
琉聖さんがドアを開ける。
「「「おかえりなさいませ、若頭!!………………っ!!!?」」」
またもや注がれる視線。
そして玄関に綺麗に並べられた2つのハイヒール。
頭をさげた一人の男の人が翔輝に声をかけた。