「関係なくないし、迷惑でもないから。それに君のためだけじゃなく、弟を取り戻すために君を利用させて貰ってるところもあるし」

夕夏にきっぱりと言い聞かせられ、陸は少し狼狽しながら小さく頭を垂れた。

「…ごめん、有難う」

「もし君が月虹に連れ戻されてしまったら、君を逃がしてくれた人の行為を無駄にすることにもなるんだ。無理をして一人で頑張ろうとしなくていいんだよ」

天地がそう告げると、陸の瞳から戸惑いの色が消えた。

「それだけは…絶対にしたくないです。彼の真意は解らないままだけど…それを無意味なものにする訳には行かない」

「それに今は、相手側も陸くんの気配を感じ取れない筈だよ。なら今回みたいに、突然襲われることはなくなるんじゃないかな」

「確かに、それは……不幸中の幸い、なのかな」

また追手がやってくるという不安自体が消えた訳ではないが――夕夏たちも力を貸してくれるということで、少し安堵した。

と同時に、ふと思い当たる。

(…、……私は)

自分には、陸のために夕夏たちと共に戦うことは出来ない。

なら自分は陸を助けるために、何が出来るだろう――


 * * *