「…駄目だ、魔法を組み込まれた皮膚の表面だけを削っても魔法は解けない。既に君の身体の奥深くまで、魔法は根付いている」

天地の言葉に、陸は苦々しげな表情を浮かべて頷いた。

「本当に…直後に浅はかなことをしたと思った。痛みは治まるどころか酷くなる上、少し力を使っただけで一気に消耗してしまって。いよいよ動けなくなったときに…晴が俺を見付けてくれたんだ」

「…!」

手を握る陸の掌の力が、少し強くなった。

「寄生型の闇魔法は無理に抗うと余計に症状が悪化する。もうこれ以上、無茶をしてはいけないよ」

「暁、その制約…何とか解くことは出来ないの?」

夕夏が暗い表情のまま、低い声色で天地に訊ねた。

「難しいな…あれは下手に解除を試みると、対象者の命が危ないんだよ。魔法を掛けた術者本人か、それより上位の能力者なら解けるかも知れないけどね」

「月虹の奴等は、そう簡単に解除出来ないように術式を組んでる筈だ…これを凌げる能力者なんてそういないだろうし、闇魔法の使い手を探すとなると…」

闇の能力者が多く存在するのは、月虹のある薄暮の国だ。

折角月虹から逃げてきたばかりだというのに、また薄暮へ戻る訳には行くまい。

「そんな…」

無意識のうちに落胆の声を上げると、天地はゆっくりと首を振って微笑んだ。

「いや、まだ方法は残ってるよ。春雷の国の霊媒師なら、能力者じゃなくても闇魔法が扱えるじゃないか」

「霊媒師?」

能力者よりも更に馴染みのない言葉に、思わず首を傾げる。

「魔力を持たない代わりに、霊力を使って精霊を喚び出せる人のことだよ。力のある霊媒師なら、より高位の精霊を喚べる」