「まあ全然心配要らなかったけどね。あたしが思ってた以上に、あんたは真面目でいい子だ」

「仄さん」

「だから、あたしにとって陸が何処から来て今まで何をしてたかってことは、然して重要なことじゃないんだ。まあ流石に犯罪やらかした逃亡者、とかなら困るけど」

「犯罪者、ではないです…」

明るく笑う仄につられたように、陸は苦笑しながらそう答えた。

「ならいいよ。あたしは自分の眼で見て確かめた、あんたの姿を信じてるから」

自分の眼で確かめた、陸の姿――

仄はふと陸の頭に手を置くと、わしわしと乱雑に頭を撫でた。

「わ、ちょっ…」

「…その信頼に、陸は十分過ぎるくらい応えてるよ。晴の怪我が擦り傷程度で済んだのは、 陸が守ってくれたからだろ」

もう一度笑って見せた仄の表情が、少し泣きそうな顔に見えた。

「…それで、あんたはこんな死に掛けるような怪我して。割に合わないよ」

仄の指先が、陸の額をぺしんと弾いた。

「っ…仄さん、俺…」

陸は何か言い掛けたが、仄が静かに首を振ったのを見て言葉を切った。

「二人共…無事で良かった。怪我が良くなったらすぐ帰っておいで。あたしは、あの家で待ってるから」


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