単に怪我をしている陸を心配する気持ちを、“異性として好き”なのだと錯覚しているだけかも知れない。

どうしたら、自分の気持ちがはっきり判るのだろう――

「…仄さんの大切な一人娘を、俺みたいな素性の知れない奴が貰う訳にはいかないよ」

(――えっ…)

ふと陸が口にした言葉に、治まりかけていた胸の動悸が再び高まった。

「そう?あたしは身元がはっきりしてたって、領主の馬鹿息子とかなんかより断然陸のがいいけど」

「仄さん、俺は…これから大事なことをみんなに話すんだ。俺は仄さんにも、その話を聞いて欲しい。そしたら俺は二人に軽蔑されるかも知れないけど…それでも聞いて、ください」

(軽蔑…?どうしてそんな――)

「大事な話、ねえ」

陸に真っ直ぐ見据えられ、仄はふと真剣な面持ちを見えたが、すぐその表情を崩していつものように笑った。

「…悪いけど、あたしは遠慮するよ」

「!仄さん、どうして…」

「あたしは陸をうちに置くとき、何も訊かないって言ったろ」

「でも」

「勿論、今まで何も考えなしにあんたと一緒に暮らしてた訳じゃないよ?最初は出掛けた振りして、あんたが晴に妙な気起こさないか様子とか見てたし」

「えっ…」

陸が声を上げたのとほぼ同時に、晴海もどきりとした。

(全然、気付かなかった…)