「私、陸の力になりたい。私なんかじゃ…全然、役に立てないだろうけど…何かひとつくらい出来ることがあるかも知れないでしょ?だから私、陸のことをもっと知りたい。…陸が独りで全部背負って悩んで苦しむのを、放っておけないよ」

――ずっと告げたくて胸につかえていた言葉を、やっと伝えることが出来た。

ゆっくりと身を離すと、晴海はまだ不安げな顔をしていた陸を安心させるように笑って見せた。

陸はほんの一瞬だけ俯いてから、顔を上げて真っ直ぐこちらを見つめ返した。

「……有難う」

先程までの不安げな表情は、もう消え去っていた。

「本当はすぐ、晴の傍からいなくなるつもりだったんだ」

「陸」

陸はゆっくり首を振ると、その手に手を取られた。

「…晴や仄さんが留まっていいと言ってくれて、何処の誰かも知れない俺のことを信じてくれて、嬉しかった。…だから、居場所をくれた君のことを絶対に守りたかった」

「…私は、そのせいでまた陸が傷付くのは嫌だよ」

陸は申し訳なさそうに項垂れると、ごめん、と自身に言い聞かせるように呟いた。

「もう、しない。俺は……俺も、晴と同じだ。晴と一緒にいたい、晴の傍にいたい。だから、俺は…晴とずっと一緒にいるって、約束するよ」

「約束?…ほんと?」

少し勘繰るように問い返すと、陸は頷いて晴海の小指に自身のそれを絡めた。

「…ね?」

その行為に「小さな子供みたい」と告げてくすりと笑うと、陸もつられたように笑みを浮かべた。

陸がこんな風に柔らかく笑ってくれたのは、初めてだ。

それが嬉しくて、もう一度陸に笑って見せる。